介護職の離職率が高い理由と、重度訪問介護が「続けやすい」理由
介護の仕事を辞めた経験がある方に、先にお伝えしたいことがあります。辞めた理由は、あなたの弱さではなかったかもしれません。
この記事では、調査データをもとに、介護職が辞める理由の中身を分解します。そのうえで、次の職場を選ぶときに何を見ればいいのかを整理します。
この記事の要点
- 介護職の離職率は低下しており、いまは全産業の平均を下回っています。
- 辞める理由の1位は仕事のきつさではなく、職場の人間関係。しかもその中身は上司との関係です。
- 続けやすさは雰囲気ではなく、人との接点の数と、誰が方針を決めているかという構造で決まります。
1. まず、離職率の数字を見ておきましょう
介護職の離職率は、いまは全産業の平均を下回っています。「介護は離職率が高い」という通念は、最新のデータには当てはまりません。
この記事のタイトルには「離職率が高い理由」と書きましたが、最初に前提を訂正しておく必要があります。
介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査によると、介護職員の離職率は12.8%でした。2年連続の低下です。
比較のために、厚生労働省の令和6年雇用動向調査も見てみます。2024年の労働者全体の離職率は14.2%、介護職を含む「医療、福祉」は13.1%でした。介護分野が突出して高いという状況ではありません。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」事業所における介護労働実態調査/厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」(いずれも2026年8月時点)
ただし、調査の設計が異なるため、両者を厳密に比較することには注意が必要です。それでも、介護だけが極端に人の辞める業界だという見方は、いまのデータでは支えにくくなっています。
とはいえ、この数字を見ても、あなたが2回辞めた事実は変わりません。大事なのは平均値ではなく、なぜ辞めることになったのかという中身のほうです。
2. 辞める理由の1位は、仕事のきつさではありません
介護の仕事を辞めた理由として最も多いのは、職場の人間関係です。体力面や仕事のきつさは、上位に入っていません。
令和5年度の介護労働実態調査で、直前の職場が介護関係だった人に退職理由を尋ねた結果は次のとおりです。
- 職場の人間関係に問題があったため……34.3%
- 法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため……26.3%
- 他に良い仕事・職場があったため……19.9%
- 収入が少なかったため……16.6%
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」介護労働者の就業実態と就業意識調査(離職理由の内訳として公表されている最新の集計)
上位4つに、体力的な負担や仕事のきつさは入っていません。介護を辞める理由といえば身体がもたないからだ、という印象を持たれがちです。しかし実際に人を職場から遠ざけているのは、別のものだということになります。
「人間関係」の中身は、相性の問題ではありません
同じ調査では、人間関係に問題があったと答えた人に、その具体的な内容を尋ねています。
- 上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった……49.3%
- 上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、信頼できなかった……43.2%
- 同僚の言動でストレスがあった……38.8%
上位2つは、どちらも上司に関することです。同僚との相性が合わなかったという話ではなく、管理する側の問題として現れています。
これは大事な点だと思います。「人間関係で辞めた」と言うとき、多くの人はそれを自分の対人スキルの問題として受け取ります。うまくやれなかった自分が悪い、と。しかしデータが示しているのは、その多くがマネジメントの問題だということです。
2位の「理念や運営のあり方への不満」も、中身を見ると具体的です
こちらも内訳が公表されています。
- 経営の効率性やリスクを過度に重視し、介護の質の向上が二の次になっていた……30.9%
- 質を上げる手法や方向性が、自分の理想と異なっていた……30.6%
- 無駄な業務が多く、職員の業務量への配慮が弱かった……30.0%
- 仕事の仕方についての職員の提案を、管理者が聞いてくれなかった……28.2%
出典:厚生労働省 介護労働者の確保・定着等に関する研究会「中間取りまとめ」(2026年8月時点)
理念という言葉から連想されるような、思想の違いの話ではありません。決め方の問題です。誰がどう決めているのか、その決定に現場の声が届くのか。そこへの不満が、退職理由の2位を占めています。
ここまでをまとめると、こうなります。介護の職場を離れる理由の上位は、仕事の内容ではなく職場の仕組みに関することです。つまり「介護が続かなかった」のではなく、「その職場が続かなかった」という言い方のほうが、実態に近いということです。
なお、これは特定の職場についての話ではありません。全国の調査結果です。
3. 「続けやすい職場」は、雰囲気ではなく構造で決まる
辞める理由が人間関係と運営のあり方なら、続けやすさを決めるのもその2つです。求人票の「アットホームな職場」という言葉では判別できません。
ここから先は、重度訪問介護という働き方の話になります。ただし、施設の介護より優れているという話ではありません。人との接点の数と、方針の決まり方という2つの構造が違う、という話です。
接点の数が、そもそも少ない
CILひかりでは、1日に担当する利用者は1名です。複数の家を掛け持ちして回ることはありません。出勤も直行直帰で、事業所を経由せず担当する方の自宅へ向かい、勤務が終わればそのまま帰ります。
この形だと、一日のうちに関わる人の数が限られます。申し送りのために全員が集まる場も、シフトの都合をめぐって職員同士が調整する場面も、施設の勤務に比べれば大幅に少なくなります。
これは「人と関わらなくていい仕事」という意味ではありません。むしろ利用者お一人との関係は、施設よりずっと深くなります。減るのは、職員同士の摩擦が生まれる接点のほうです。離職理由の1位が上司や同僚との関係であることを踏まえると、この違いは小さくありません。
参考までに、先ほどの令和6年度調査では、訪問介護員の離職率は11.4%で、介護職員の12.8%より低い結果でした。ただしこの調査でいう訪問介護員は介護保険サービスの訪問介護員であり、障害者総合支援法にもとづく重度訪問介護とは別の制度です。重度訪問介護の離職率を示す数字ではないことは、あわせてお伝えしておきます。
方針を、誰が決めているか
退職理由の2位が運営のあり方への不満だったことを思い出してください。だとすれば、その事業所で誰が方針を決めているのかは、続けやすさに直結します。
CILひかりは自立生活センター(CIL)と呼ばれる形の法人で、代表の川﨑良太は脊髄性筋萎縮症(SMA)の当事者です。サービスを受ける側の人が、サービスを提供する法人の運営に携わっています。
1日1名の担当制も、完全同性介助も、見守りの時間を勤務時間として扱うことも、この構造から出てきています。効率を優先するなら、いずれも別の形を選ぶことになるはずのものです。
4. それでも、続かないことはあります
構造が合っていても、合わないことはあります。都合の悪いところも書いておきます。
休日はシフト制で、月8〜10日が目安です。休日数について明確な規定を設けているわけではなく、現状では週休2日を取れていない方もいます。この点は課題として認識していて、改善に取り組んでいるところです。
また、この働き方が窮屈に感じられる方もいます。生活のことを決めるのは利用者本人なので、自分の判断で手際よく進めたい人には、もどかしい場面があるかもしれません。
介護の仕事を辞めた方の勤続年数を見ると、3年未満が5〜6割を占めるという調査結果もあります。入る前の想像と、入った後の実際にずれがあることが、その背景のひとつだと考えられます。だからこそ、良いところだけを書くのは違うと思っています。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度介護労働実態調査」事業所における介護労働実態調査(2026年8月時点)
5. 次の職場を見極めるために、確認したい3つのこと
離職理由の上位3つに対応させて、面接で確認できることを挙げます。CILひかり以外を受けるときにも使えます。
① 一日のうち、誰と何回関わりますか
人間関係が離職理由の1位である以上、接点の量は先に知っておく価値があります。何人の職員と、どういう場面で顔を合わせるのか。申し送りや会議はどれくらいの頻度であるのか。「雰囲気が良い」という答えではなく、具体的な回数で聞いてみてください。
② 現場の意見は、どういう経路で反映されますか
運営への不満が2位だったことを踏まえると、この質問は効きます。提案する窓口があるか、実際に変わった例があるか。答えに詰まるようなら、その経路は機能していない可能性があります。
③ 休みは、実際にどのくらい取れていますか
求人票の休日数ではなく、実績を聞くということです。規定と実態が違う職場は珍しくありません。答えにくそうにされたとしても、聞いた価値はあります。その反応自体が情報だからです。
CILひかりに対しても、この3つはそのまま聞いていただいて構いません。3つめについては、この記事の前の章に書いたとおりの状況です。
Q. 介護の職場を2回辞めています。また同じことになりませんか
A. 保証はできません。ただ、辞めた理由を「自分が続かない人間だから」ではなく「その職場の何が合わなかったのか」という形で言葉にしておくと、次を選ぶときの基準になります。調査でも、離職理由の上位は個人の資質ではなく職場の仕組みに関することでした。
Q. 重度訪問介護は、施設の介護より続けやすいのですか
A. 人との接点の数という点では、構造が異なります。ただし、どちらが優れているという話ではありません。一人の方と深く関わることが負担になる方もいますし、施設のチームで働くほうが合う方もいます。
Q. 未経験ですが、離職率の高さが不安です
A. 介護職の離職率は低下傾向にあり、いまは全産業の平均を下回っています。そのうえで、職場ごとの違いは大きいので、上の章の3つの質問を面接で使ってみてください。