『自分にできるかな』から始まった、この仕事。失敗を重ねた分だけ、人に寄り添えるようになった
帽子屋の店長から、まったくの未経験で重度訪問介護の世界へ。気づけばヘルパー歴10年を超えました。ケアアテンダント・長野健太郎さんに、飛び込む前の不安、一番ショックだった失敗、そしてそれをどう乗り越えたのかを、正直に語ってもらいました。
帽子屋の店長から、重度訪問介護の世界へ
長野さんは現在、ヘルパー歴10年を超えるベテランのケアアテンダント。派遣ヘルパーとして利用者さんの生活を支えながら、イベントや広報を担うマーケティングチームのリーダーも務めています。休日は子どもと過ごしたり、幼い頃から慣れ親しんだ釣りに出かけたりするそうです。
意外なことに、前職は介護とはまったく無縁の販売職でした。
「靴屋でアルバイトをして、そのあと有名なショッピングモールの帽子屋さんに16歳でアルバイトとして入って、9年間販売接客をしていました。22歳のときには店長になっていましたね」
転機は、店長として働くなかで、お店の未来に不安を感じ始めたタイミングで訪れます。
「その頃、同じモールで働いていた人たちが、チラホラひかりに勤め始めていたんです。ある時その人たちから誘われたのが、入社のきっかけになっています」
今では周囲とのコミュニケーションの巧みさに定評のある長野さんですが、もともとは人見知りだったといいます。
「帽子屋にはとんでもない数のお客様が来られていて、毎日、後ろを振り返れば別の人に変わっているような状況でした。質問されては答えて、理不尽に怒られてクレームにも対応して。そうしているうちに、人と話すことに慣れて鍛えられていった感じです」
「キツイ・汚い」イメージ。飛び込む前の不安と、その正体
介護未経験からの転職。応募前は、やはり不安があったそうです。
「不安はもちろんありました。キツイ、汚いというイメージがあったし、やってみないと分からないという不安、人とのコミュニケーションがうまくいくかという不安もありました」
その不安を和らげたのは、先に働き始めていた知人たちの言葉でした。
「複数人を相手にする介護ではなく、1対1で対応していて時間にも余裕がある。利用者さんのペースに合わせて支援をするし、会話もできる。1日に何十人も対応する仕事ではないから、想像している介護とは違うよ、という話を聞けていたことが大きかったです」
ポイント:CILひかりの重度訪問介護は、1日1名の利用者さんとじっくり向き合う1対1の支援スタイル。施設のように大勢を同時に担当することはありません。
不安の中には、実は「期待」も混じっていたと長野さんは振り返ります。
「亡くなったばあちゃんから、中学生の頃に『あんたは絶対将来介護をするから』みたいなことを言われていたんです。予言的なことがあったなって思い出します。僕の未来が見えていたのかな?(笑)いとこからも『あんたは介護向いてる』と言われたことがあって。今の自分は介護に向いているのか、試してみたい気持ちがありました」
「飛び込んでみないと分からないよなと思って、飛び込んでみようってなりました」
研修と同行期間。先輩の「いいところ」を真似することから
入社後は、先輩ヘルパーが利用者さん宅へ一緒に入る「同行」の期間があります。
「派遣先に行くことへの不安や怖さは、同行があることで少し和らぎましたね。いろんな先輩ヘルパーの方々がついてくれて、それぞれのお手本を見て、いいなと思った先輩のやり方を自分にどう取り込めるかを試して、真似していました」
重度訪問介護に必要な研修は、当時は宮崎など県外まで受けに行っていたそうですが、現在はCILひかりの事務所で受けられる体制が整っています。
初めてひとりで訪問した日のことも、鮮明に覚えているといいます。
「人工呼吸器をつけている、すごく冗談を言ってくださる利用者さんでした。話しかけてくれているのに、なかなか聞き取れなくて。3回くらい聞き直したら『もうよかー』って言われて、『あ、おれ何かすごいミスを犯してる』と思って。そこからは待機中も、何ひとつ聞き逃さないように過ごしていたのを覚えています」
一方で、こんな微笑ましいエピソードも。
「利用者さんと買い物に行って『次は○○を買いに行きます』と言われたんですが、その言葉が何回聞いても聞き取れなくて。文字盤も使ってもらったんですけど、最後まで示してもらえなくて。結果的にプリンを買いに行きたかったみたいなんです。でも自分はプリンター、プリンターのインク……とか考えてしまって。目の前にプリンがあるのに(笑)。最後は『プリン、あっ、プリン⁉』『そうそう!』となって、無事に買うことができました」
「夜勤で呼んでも来ない」——一番ショックだった失敗
順調に見えたキャリアの中で、長野さんが「これ自分には無理かも」とまで思い詰めた出来事があります。
「夜勤のとき、自分では利用者さんに呼ばれたらしっかり対応できていると思っていたんです。でもある時『夜勤で呼んでも来ない』と言われて。とてもショックを受けました。あとから聞くと、何回か呼んでようやく来た日があったみたいで。10回呼ばれたら10回対応できていると思っていたのに、実際にはもっと呼ばれていて、気づいていないものもあったと知りました」
「『ちゃんとできている』と安心して働いていた分、『自分が思っていたのと現実が違ったんだ』と感じて、正直かなり悩みました。『いやいや、俺は起きているのに』という思いがずっと邪魔をして、葛藤していました。事実として起きられていなかったのが現実だったのに」
その時期を支えてくれたのは、友人であり同僚でもある存在でした。
「毎日相談していました。この仕事を頑張りたい気持ちと、もうこれ以上は無理かも、という気持ちが毎日揺れ動いていて。その人は何か言葉をくれたわけじゃなく、ただ聞いて、笑っていてくれた。ガス抜きをしないと保てなかった時期に、笑って話を聞いてもらって元気をもらっていたことが、ありがたかったんだと今振り返ると思います」
働き方の面でも、無理のない調整が行われました。
「日勤をメインにシフトを組んで、夜勤の回数を調整してもらって、少しずつ慣らしてもらいました」
直行直帰でも、相談できる場所がある
「直行直帰なので孤独を感じたことはあります。ただ今は、月1回のコーディネーター(CN:ヘルパーと利用者さんの間に立ち、シフトや困りごとの調整を担うスタッフ)との面談である程度の相談ができるようになり、連絡も取りやすい環境になりました。困りごとや悩み事が解決するようになって、ガス抜きする場所があるのは良いことだなと思います」
訪問入浴のヘルパーさんに教わった、考え方が変わった瞬間
仕事のきつさについても、長野さんは飾らず話してくれました。
「人の便には、正直いまでも慣れきれないですね。見ることや対応することには慣れてくるんですが、他人の便は他人のものという気持ちになってしまって。匂いも、便は便なんですよね(笑)。まぁでも施設などに比べたら、1日にいろんな方の排泄介助に対応するわけではないので、大丈夫な感じです」
そんな長野さんの考え方を大きく変えたのが、ある訪問入浴のヘルパーさんとの出会いでした。
「利用者さんの臀部を、ものすごく丁寧に洗っている方がいたんです。その光景を見て『ハッ!』となりました。そうだよな、自分の体はそうやってきれいに洗うのに。自分で洗うことができない人の介助者でいるわけだから、やっぱりしっかり洗わなきゃいけない。そう思うようになって、その方からいろいろ学ばせていただきました」
「そのくらいから、考え方が変わって、見え方や感じ取り方も変わっていきました。便はその時の身体の状態のサインにもなっていると今では思いますし、利用者さんに『今日はこういう状態でしたよ』と伝えるようにしています」
あの夜勤の失敗も、今では意味のある経験だったと語ります。
「自分のミスを受け入れることができたから、良かったと思います。あのとき受け入れられなかったら、そのまま自分が腐ってしまっていたんじゃないかと。受け入れる姿勢は、自分に足りないものを得るために必要なことだったんだと思います。そこから自分の得意なことは伸ばして、『この人のこういうところいいな』と思ったらピックアップして、自分にも取り入れる。そんな感じですね」
出張、講演会、バーベキュー。直行直帰でも、ひとりじゃない
楽しかった思い出を尋ねると、真っ先に挙がったのは利用者さんとの出張でした。
「新しい場所、行ったことのない場所に行くのが好きなので楽しいですね。愛媛に出張で行ったときは、利用者さんと空き時間にちょこっと観光をして、『ここが松山城かー』とか『水道からみかんジュースが出てきますねー‼』なんて話をしながら、出張そのものを楽しむことができました」
CILひかりでは、自立生活講演会や夏のバーベキュー、おはら祭りへの参加など、スタッフや利用者さんが集まるイベントも大切にしています。
「夏のバーベキューは、準備や肉焼き担当で体力的にきついし暑いし、肉を焼いていたら自分も焼けそうー!ってなるんですけど(笑)。でもやっぱり直行直帰の仕事なので、普段関わらない人同士がコミュニケーションをとっているのを見ると、『こういうのって大事な時間なんだな』と思います。仕事だけじゃなくて、息抜きの部分でその人の良いところってあったりしますもんね」
「おはら祭りは11月の参加で、雨が降って濡れたらめっちゃ寒くて。そのしんどさも共有できているから、思い出に変わるのかなと思います。参加する前はいろいろな思いがあっても、参加してみたら結局『楽しかったね』ってなるんですよね」
この仕事に向いている人、正直きついかもしれない人
10年のキャリアを経た長野さんに、この仕事に向いている人を聞きました。
「障害者の自立生活を支える派遣ヘルパーとして、1日の派遣が『その人の人生の未来を築いていく社会貢献につながっているんだ』と理解できたとき、自分はやりがいを感じることができました。施設などで多くの利用者さんを相手にして疲れを感じている人には、向いているかもしれません。1日に多くの方を相手にすることはなく、1対1の介助なので。仮に20人に向けていたエネルギーを、1人に注ぐことができるのがポイントですね」
逆に、こういう人には正直きついかもしれない、という点も率直に。
「時間にルーズな人。社会一般的に見ても当たり前のことですけど。それと、責任感が他責な人ですね。この仕事は当事者(利用者さん)からの指示を待って動くスタイルですが、姿勢は自責じゃないといけない。他責にしようと思えばいくらでもできてしまう。『自分がまずどう立ち回れば良かったのか』という視点が必要だと思うんです」
利用者さんと考え方のズレが生じたときの向き合い方にも、その姿勢が表れています。
「利用者さんに確認はしますね。そのときも、自分の聞き方が誘導するような確認にならないように気をつけています。お互いが『分かりました』って着地できるように、そこは努力しています」
ポイント:「利用者さんの指示を待ちつつ、姿勢は自責で」——これはCILひかりが大切にする「自己選択・自己決定」の理念(利用者さん自身が自分の暮らしを選び、決めること)を、ヘルパー側から支える考え方です。
応募を迷っている人へ
最後に、これから応募しようか迷っている人へのメッセージをお願いしました。
「一旦、興味を持ったなら1度来てみて。面接だけでも来てみてください。自分に合っているかどうかは、入ってみないと分からない。決まった時間で無理なく働けて、長期雇用があります。持ち家を持っている人も沢山いますよ」
「これからどんどん大きくなっていくひかりに、力を貸してください。みんなで盛り上がっていきましょう」
マーケティングチームのリーダーとしての野望も聞かせてくれました。
「今後は自分の趣味をもっと活かしていきたいですね。魚釣りやクワガタのイベントを開催して、イベントの波をあちこちで起こしていきたい。『あのイベントいつから?』と声をかけてもらえるくらいになっていきたいです」
失敗を受け入れ、先輩の良いところを取り込みながら、10年かけて自分の寄り添い方をつくってきた長野さん。他のスタッフのインタビューや、募集要項もあわせてご覧ください。