現場の仕事は好きだけれど、このまま同じことを20年続けるのだろうか。そう考えたことがある方に向けて書いています。
重度訪問介護には、コーディネーターと呼ばれる役割があります。昇進というより、役割が増えるという表現のほうが近い仕事です。
この記事の要点
コーディネーターは、現場とスタッフをつなぐ調整役です。
この役割が必要なのは、重度訪問介護が1対1で、しかも職員同士が顔を合わせにくい働き方だからです。
現場から離れる仕事ではありません。管理職になるという話とも、少し違います。
1. 「現場のまま20年」という不安について
介護の仕事は、役割が変わりにくい職種だと思われがちです。ただ、変わり方はひとつではありません。
介護の仕事を数年続けると、多くの人が同じところで立ち止まります。業務には慣れた。利用者との関係もできている。ただ、5年後も10年後も、やっていることは同じなのではないか。
ここで多くの人が思い浮かべるのは、管理職になるという道です。そして同時に、そこへの抵抗も生まれます。現場が好きで入ったのに、机に向かう仕事に移るのは本意ではない、という感覚です。
この二択で考えると、行き止まりに見えます。現場のままか、現場を離れるか。
介護の仕事で先を考えるとき、道筋はいくつかあります。資格を積み上げて専門性を高めていく道、医療的ケアに対応できる範囲を広げる道、そして役割そのものを変える道です。前の2つは資格の話なので、別の記事で扱っています。
この記事で扱うのは、3つめです。コーディネーターは、現場のままか現場を離れるかという二択の、その中間にある役割です。
2. コーディネーターは、何をする人か
利用者とスタッフの間、そしてスタッフと事業所の間に立って、調整する役割です。
CILひかりでは、コーディネーターを「現場とスタッフをつなぐ調整役」と説明しています。実際にどういう場面で関わるかを挙げます。
新しく入ったスタッフの同行——利用者宅へ一緒に伺い、その方の生活の流れや気をつけていることを現場で引き継ぎます
判断に迷う場面の相談——独り立ちしたスタッフが現場で迷ったとき、相談を受けます
利用者との調整——支援の内容や進め方について、本人の意向を確認しながら決めていきます
シフトと人の組み合わせ——誰がどの方を担当するかを調整します
共通しているのは、どれも「人と人の間」に立つ仕事だということです。新しい道具を扱うわけでも、まったく別の専門知識を使うわけでもありません。現場を知っていることが、そのまま仕事の土台になります。
記録を読む、という仕事
もうひとつ、表に出にくい仕事があります。スタッフが書いた記録を読むことです。
重度訪問介護では、スタッフが利用者宅で見聞きしたことは記録を通じてしか共有されません。施設のように、廊下ですれ違いざまに伝えるという経路がないからです。
記録に書かれた小さな変化に気づけるかどうかで、対応の早さが変わります。食事の量が減っている、同じ訴えが繰り返されている。一人のスタッフの目には点にしか見えないことが、全員分を読んでいる人には線として見えます。
制度上の「サービス提供責任者」とは分けて考えてください
ここで用語を整理しておきます。障害福祉サービスの制度には、サービス提供責任者という役職があります。事業所に配置が義務づけられていて、就くための資格要件も定められています。
一方、コーディネーターという呼び方は、事業所ごとの呼称です。制度上の役職名ではありません。事業所によって、担当する範囲も呼び名も変わります。
この記事で書いているのは、CILひかりで使われている意味での「コーディネーター」です。他の事業所の求人で同じ言葉を見かけたときは、業務の中身を確認されることをおすすめします。
3. なぜ、重度訪問介護にこの役割が必要なのか
1対1で長時間、しかも事業所に集まらない働き方では、放っておくと一人ひとりが孤立するからです。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
重度訪問介護は、1日1名を担当し、直行直帰で働きます。利用者の自宅へ直接向かい、終わればそのまま帰ります。効率がよく、移動の負担も少ない働き方です。
ただ、この形には裏側があります。スタッフ同士が顔を合わせる機会が、構造的に少なくなるということです。
施設であれば、休憩室で雑談しているうちに「あの場面、どうしてる?」という話が出ます。重度訪問介護では、その場面がありません。困っていても、誰にも言わないまま一人で抱える状態になりやすい。
コーディネーターは、そこに立っています。つまりこの役割は、現場を管理するためではなく、現場が一人にならないためにあります。
利用者の側から見ても、同じことが言えます
介助に入るスタッフが固定されていると、関係は深くなります。一方で、関係が近くなりすぎて、言いにくいことが出てくることもあります。やり方を変えてほしい、別の人に来てほしい。本人からは言い出しにくい内容です。
そのとき、第三者として間に入る人がいるかどうかで、本人が意向を伝えられるかどうかが変わります。誰に介助されるかを本人が選べる状態を保つという意味でも、この役割は必要になります。
4. 現場を離れるわけではありません
現場の経験が、そのまま仕事の内容になります。デスクワークに移るという種類の変化ではありません。
昇進という言葉から想像されるのは、現場を離れて管理する立場になることだと思います。コーディネーターは、そういう形とは少し違います。
新人に同行して利用者宅に入り、現場で引き継ぐ。迷っているスタッフの相談を受ける。利用者と支援の進め方を話す。いずれも、現場を知らなければできない仕事です。
むしろ、現場で積んだ時間がそのまま使われる役割だと言えます。何年も介助してきた経験があるからこそ、「その場面はこうするといい」と言えるからです。
給与や待遇については、面接でご確認ください
役割が増えれば、処遇も変わります。ただし具体的な条件は時期によって変わりますので、ご関心があれば面接の場でお尋ねください。この記事で金額を書くことは控えます。
5. 未経験から入った人が、就くこともあります
介護の経験がない状態から入職して、コーディネーターになった人がいます。
CILひかりの採用サイトには、スタッフのインタビュー記事を公開しています。その中に、介護の経験がないところから入職し、コーディネーターになったスタッフの記事があります。
ここでお伝えしたいのは、特定の誰かがすごい、という話ではありません。入口が介護未経験であっても、この役割に就く道が閉じていないという事実です。
必要なのは資格の積み上げだけではなく、現場で一人ひとりの利用者と向き合ってきた時間のほうです。
現場で続けた年数は、無駄になりません
介護の仕事では、長く現場にいることが評価されにくいと感じる場面があります。役職が変わらないかぎり、何年いても同じに見えるからです。
ただ、コーディネーターの仕事の中身を見ていくと、そこで使われているのはほとんどが現場の時間です。利用者の生活のリズムを知っていること、新人がどこでつまずくかを覚えていること、支援の方法を本人と一緒に決めてきた経験。どれも、現場にいなければ手に入りません。
役割が変わるかどうかとは別に、現場で積んだ年数そのものが仕事の材料になる。そういう構造になっています。
ただし、全員が就く役割ではありません
正直に書いておきます。コーディネーターは事業所に必要な人数が決まっている役割で、希望すれば誰でも就けるものではありません。時期によって、空きがあるかどうかも変わります。
また、現場で介助を続けることを選ぶ人も多くいます。それは消極的な選択ではありません。一人の方とじっくり関わり続けることにこそ面白さを感じる人にとっては、そちらのほうが合っています。
6. 自分に向いているか、を考えるとき
調整する仕事なので、答えを出す力より、間に立ち続けられるかどうかが問われます。
コーディネーターに向いているかを考えるとき、分かりやすい基準をひとつ挙げるとすれば、板挟みに耐えられるかどうかです。
利用者の希望と、スタッフの事情が食い違うことがあります。どちらも正しいことがあります。そのとき、どちらかを切り捨てて早く終わらせるのではなく、両方の話を聞いて落としどころを探す。この作業を、面倒だと感じるか、やりがいだと感じるか。
もうひとつは、自分が主役にならないことに納得できるかどうかです。コーディネーターの仕事は、うまくいっているときほど目立ちません。誰も困っていない状態をつくるのが役割だからです。
※本記事の制度に関する記述は、2026年10月時点の情報にもとづいています。役割の名称や業務範囲は事業所によって異なります。
Q. コーディネーターになるには、資格が必要ですか
A. CILひかりでの登用の条件については、面接時にご確認ください。なお制度上のサービス提供責任者には、別途資格要件が定められています。
Q. コーディネーターになると、現場には出なくなりますか
A. 新人への同行をはじめ、現場に入る場面があります。完全にデスクワークへ移るという役割ではありません。
Q. 入職してどのくらいで就ける役割ですか
A. 決まった年数はありません。事業所に必要な人数が決まっている役割なので、時期による部分もあります。