無資格・未経験から介護福祉士へ。10年以上続けられた理由があります
高級時計の販売員から、まったく未経験で重度訪問介護の世界へ。そこから介護福祉士になり、気づけば10年以上。ケアアテンダント・下原田まゆさんに、続けられた理由をうかがいました。
旅好きのケアアテンダント、下原田さんってどんな人?
休日は津々浦々を旅するのが好きという下原田さん。気づけばこの職場に10年以上在籍しています。
「ここまで長く続いているのは、仕事が好きなのはもちろんですが、利用者さんと一緒に過ごす中で、普段は体験できない人の優しさにふれることが多いからだと思います。こちらも優しさをいただいているなと感じるんです」
支える側でありながら、利用者さんから優しさをもらっている——。その対等な関係性が、長く働き続けられる理由の一つになっているようです。
高級時計の販売員から、介護の世界へ
入社前は、どんなお仕事をしていましたか?
「いろいろなアルバイトを経験したあと、デパート内の時計屋で販売員をしていました。高級時計を扱うお店でしたが、私は全然時計に詳しくならなくて(笑)。マニアなお客様が多いので、知識のない私では対応できず、先輩方が接客してくれるのをボーッと見ている販売員でした」
応募したきっかけは?
「ある時『接客業、向いてないなぁ』と思い始めたタイミングがあったんです。ちょうどその頃、勤めていた時計屋に置いてあった求人誌の中に、CILひかりがありました。『ここに電話しよう』と思って連絡したんです」
背中を押したのは、求人に書かれていた一文でした。「『無資格可・未経験可』と書いてあって。看護学生をしていた経験もあったので、『知識が生かせるところかな』と思ったのがきっかけです」
応募前は、どんな不安がありましたか?
「実は当時、就職が厳しい時代で、CILひかりに就職するまでに10件近く落ちていたんです。だから『どうせまた落ちるんだろうな。落ちたら次どうしよう』とも思っていました」
結果は、採用。「落ちるかもなと思っていたら受かったので、『こんな私を拾ってくれてありがとう』という感謝の気持ちでした」と、当時を振り返ります。
「いきなり一人じゃない」——研修と同行のリアル
研修・同行期間は、どうでしたか?
「新しい出会いや学びが新鮮でした。CILという団体がどうしてできたのか、その歴史。世の中にはどういう人たちがいて、どんな障害のある方がサービスを利用しているのか。障害のある方が施設などを出て一人暮らしをするとはどういうことか——そういったことを知ることができました」
未経験で飛び込んだ現場。それでも「いきなり一人」ではありませんでした。
「同行の時は先輩ヘルパーさんがいてくれたので心強かったです。『いきなり一人じゃないんだ』と思えて安心しました」
ポイント:CILひかりの同行研修は、本人が「大丈夫です」と言えるまで、先輩ヘルパーが何度でも付き添います。
「『自分に不安が残っていたら、利用者さんも不安になってしまうから』という理由で、私が納得するまで付いてくださいました。私自身、覚えが悪くて耳も悪いので聞き間違いも多かったですし、新しい環境に慣れないうちはミスもありました。そのぶん同行に長く時間をとってくださって。皆さん優しかったですね」
現場に出て気づいた、「利用者主体」という世界
初めて一人で訪問した日のことを教えてください。
「やっぱり初めての場所は緊張しました。途中で応援を呼ぶんじゃないかと思うくらい(笑)。でも、利用者さんが逆に『大丈夫だよ』と声をかけてくれて、少し和らいだんです」
入社前に聞いていた話と「違ったな」と感じたことは?
「『利用者さんが主体』という部分が、想像以上に徹底されていました。看護学校では病院主体で学んでいたので、面接で利用者主体と聞いてはいても、入社して改めて『ここは利用者主体なんだ』と実感しました」
とはいえ、それはネガティブな驚きではなかったと言います。「『聞いていた話と違うんですけど!』みたいなことではなく、利用者さんの一人暮らしにこんな世界があるんだ、という新鮮さや驚きの方が大きかったですね」
「やってみよう」が、不可能を可能にした日
シャワーチェアがないと入浴できない利用者さんが、出張先で「洗髪をしたい」と希望されたことがありました。けれど宿泊先はユニットバスで、シャワーチェアもありません。「さあ、どうしようか」となった時、部屋にあった椅子とバスタオルを組み合わせて、洗髪できる環境をつくり出したそうです。「無事に洗えて、不可能を可能にできた。チャレンジして良かったなと思いました」
深夜のカップ麺、USJ、海岸のBBQ——忘れられない思い出
利用者さんとの、楽しかった思い出は?
「一番印象に残っているのは、出張先での夜です。晩ごはんは早めに済ませていたんですが、他県の人たちとの交流で盛り上がって帰宅が遅くなって。利用者さんと『お腹すきましたねー』という話になって、深夜2時ごろに私は塩ラーメン、利用者さんは味噌ラーメンの小さいカップを買ってきて、『美味しいね』って二人で笑い合って食べたんです。なんだか背徳感があって(笑)、すごく楽しかった」
「あとは、フェリー『さんふらわあ』に乗ってUSJに行ったことも思い出です。車いすを乗り換えれば楽しめるアトラクションがあって、ジョーズに乗りました。フェリーにもバリアフリールームがあるので、ぜひ乗ってみてほしいです」
「これは良かった」と思ったイベントは?
「海岸でみんなで行ったBBQですね。スイカ割りをしたのが楽しかった思い出です。猫や子どもたちがいたりして、にぎやかでした」
正直しんどい瞬間と、その乗り越え方
良いことばかりではありません。下原田さんに、しんどさの本音もうかがいました。
仕事中、きついと感じる場面は?
「簡易電動車いすをずっと押していた時は、体力がなくてきつかったですね。体力をつけようと思いましたし、体のメンテナンスも必要だなと。なんなら、電気風呂の気持ちよさが分かるようになりました(笑)」
直行直帰で「孤独だな」と感じたことは?
ポイント:「孤独に感じたことはありません。今は慣れてきたこともあって、むしろそのほうが楽にも感じます」
利用者さんと、難しいと感じた経験は?
「コミュニケーションですね。利用者さんが話す内容の聞き取りがうまくいかなかった時です。慣れてきた頃に、その日の利用者さんの気持ちに寄り添えていなかったのが原因でした。利用者さんも私たちと同じで、気分や気持ちは日によって変わりますから」
それを、どう乗り越えましたか?
「聞き取りがうまくできない時は、なんとなくで理解しようとせず、分かるまでしっかり聞くようにしています。利用者さんが『もういい〜』と言ってきたら、『すみません、聞き取りがうまくできなくて』と伝えます。適当に返事をしたら利用者さんも気づくでしょうし、お互いがしっかり理解するまで付き合ってもらうことが大事だと思っています」
自分で解決できない時は、一人で抱え込みません。「コーディネーター(CN)や上司の方に相談しています」
今振り返ると、その経験はどんな意味がありましたか?
「ヘルパーとして、人として成長できたと思います。コミュニケーションのスキルもそうですね。実は、自分の妹が車いすに乗っていた時期があって。車いすで東京観光をした時に、ここで身につけた福祉の知識や技術を還元することができたんです」
仕事で得たものが、プライベートの大切な場面でも生きた——。下原田さんにとって、忘れられない経験になりました。
10年以上続けられた理由
改めて、長く続けられている理由をうかがうと、答えはシンプルでした。
「利用者さんに必要とされていることを実感するからです。必要とされることは、うれしいことでもあります」
同じ壁にぶつかっている新人がいたら、どんな言葉をかけますか——。そう尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「職場の人に相談することが大事なのかな、と思います。溜め込まないこと。そして、時には諦めも肝心です。利用者さんと考え方のズレが起きた時は、とりあえず深呼吸して、いったん落ち着く。手を洗ったりして、脳と気持ちをリセットしています」
応募を迷っているあなたへ
「こんな人に向いている」と感じるのは、どんな人ですか?
「利用者さんの気持ちを考えられる人。利用者さんの補助に徹することができる人だと思います」
逆に「正直きついかも」と思う場面は?
「利用者さんが求めていないアドバイスを押し付けてしまう人には、難しいかもしれません。『こうした方が良い』と、利用者さん優先で考えられない人ですね。ここは利用者さん主体の職場なので」
これから応募しようか迷っている人へ
「無資格で経験がなくて不安があっても、私も無資格・未経験でここに入って、介護福祉士を取るまでに成長できました。ひかりのサポートもしっかりしていたので、安心して、まずは来てください」
未経験から始めて、介護福祉士になり、10年以上。下原田さんの歩みは、「自分にできるだろうか」と迷っている方への、何よりの答えかもしれません。CILひかりの仕事内容や、ほかのスタッフの声を集めたインタビュー一覧も、ぜひのぞいてみてください。