重度訪問介護の「1日1名担当制」のメリットとは?
「介護は流れ作業でこなすもの」——そんなイメージがあるなら、重度訪問介護の働き方は少し意外に映るかもしれません。1日に担当するのは1名だけ。じっくり向き合えるこの働き方のメリットと、知っておきたい留意点まで正直にお伝えします。
「一人ひとりに向き合えていない」——その手応えのなさ、気のせいではありません
介護の仕事を続けるなかで、ふと立ち止まる瞬間があります。「自分は今日、何人の方と関わっただろう」「でも、その一人ひとりのことを、どれだけ分かっているだろう」。そんな思いが胸をよぎったことはないでしょうか。
十数人を掛け持ちする現場で起きること
施設介護や一般的な訪問介護では、一人のスタッフが一日に何人もの利用者さんを担当することが珍しくありません。食事の介助を終えたら次は入浴、その合間に排泄のケア——時間に追われながら動くうちに、気づけば「決められたことを時間内にこなす」ことだけで一日が過ぎていきます。
もちろん、それぞれのケアは大切な仕事です。けれど、慌ただしさのなかでは、利用者さんの小さな表情の変化や、「今日はいつもと違うな」という違和感に気づく余裕までは持ちにくいのも事実です。
「深く関わりたかったはず」という初心
介護の道を選んだとき、多くの方が「人と深く関わりたい」「誰かの支えになりたい」という気持ちを抱いていたのではないでしょうか。その初心が、忙しさのなかで少しずつ薄れていくように感じる。もしそんな手応えのなさを覚えているなら、それは決してあなたの気のせいでも、わがままでもありません。むしろ、もっと丁寧に関わりたいという真っ当な願いの表れです。
重度訪問介護の「1日1名担当制」とは?
重度訪問介護でCILひかりが採用しているのが、「1日1名担当制」という働き方です。これは、その名のとおり、1日のなかで担当する利用者さんを1名に絞る仕組みを指します。
1日に担当するのは1名だけ、という働き方
重度訪問介護とは、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスのひとつで、重度の障害がある方の自宅に伺い、身体介護や見守りなどを長時間にわたって支える仕事です(出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」)。短時間で複数の家を回る一般的な訪問介護とは異なり、一人の利用者さんのもとで、まとまった時間を過ごします。
CILひかりでは、このスタイルをさらに徹底し、1日に担当するのは1名のみ。複数の利用者さんを掛け持ちすることがありません。だからこそ、その日はその方の暮らしにじっくり寄り添うことができます。
施設介護・一般的な訪問介護との違い
施設介護では、限られた人数のスタッフが多くの入居者を支えるため、どうしても「一対多」の関わりになります。一般的な訪問介護も、1件あたり数十分から1時間程度で次の家へ移動することが多く、関わりが断片的になりがちです。
これに対して1日1名担当制は、「一対一」でじっくり関わる働き方です。同じ人と、同じ時間を、繰り返し過ごす。その積み重ねが、これからお伝えするメリットを生み出します。重度訪問介護そのものの仕事内容は、仕事内容のページでもご紹介しています。
1日1名担当制の3つのメリット
1日1名担当制の魅力は、大きく3つに整理できます。いずれも「深く関われること」から生まれる価値です。
① 利用者さんの生活リズム・好みを深く理解できる
同じ方と長く関わると、その人の暮らしのリズムが自然と見えてきます。「朝はゆっくり起きたい」「お昼の薬はこのタイミング」「この音楽が好き」——一人ひとり違う、その人らしい暮らしのかたちが分かってくるのです。掛け持ちの現場では、こうした細やかな好みまで把握するのは簡単ではありません。1名に集中できるからこそ、マニュアルには載っていない「その人だけの当たり前」に応えられます。
② 小さな変化や体調のサインに気づける
毎日同じ方と向き合っていると、「いつもと少し違う」に敏感になります。顔色、声のトーン、食欲——わずかな変化が、体調の異変の早期発見につながることもあります。利用者さんが自分の不調をうまく言葉にできない場合もあります。そんなとき、日頃から深く知っている担当者の「気づき」は、暮らしの安心を支える大切な役割を果たします。
③ 自分のペースで落ち着いて関われる
次の家へ急ぐ必要がないため、気持ちに余裕を持って関われるのも、この働き方の特徴です。慌ただしさに追われないぶん、目の前の方ときちんと向き合える。「もっと丁寧に関わりたい」という願いを、無理なくかたちにできます。CILひかりでは見守りの時間も勤務時間に含まれるため、待機しながら過ごす時間も、利用者さんの暮らしを支える大切な仕事として位置づけられています。
3つのメリットはすべて「深く関われること」から生まれる
①生活リズムや好みを深く理解できる/②小さな変化や体調のサインに気づける/③自分のペースで落ち着いて関われる。効率だけでは語れないこの価値が、1日1名担当制の核心です。
担当制がいちばん活きるのは「その人らしい暮らし」を支えるとき
1日1名担当制のメリットは、効率や働きやすさだけにとどまりません。この働き方が本当に活きるのは、利用者さんが「自分らしく生きる」ことを支える場面です。
深く知る関係があるから、希望をくみ取れる
CILひかりは、CIL(自立生活センター)の理念にもとづいて運営されています。CILとは「自分の人生を、自分で選び、自分で決める」という考え方を大切にする、障害当事者が中心となって活動する団体です。この理念のなかで、ヘルパーの役割は「お世話をする人」ではありません。「利用者さんが決めた暮らしを、一緒に実現していくパートナー」です。
たとえば「今日はあの店まで出かけたい」「この時間に友人と会いたい」——そうした一つひとつの希望をくみ取り、かたちにしていく。けれど、相手のことを深く知らなければ、本当の希望はなかなか見えてきません。1日1名担当制は、深く知る関係を育てることで、この「希望をくみ取る」を支える土台になります。
「自己選択・自己決定」を支えるCILひかりの考え方
「自己選択・自己決定」とは、必要な支援を受けながらも、自分の人生のハンドルは自分で握るという考え方です。何を食べ、どこへ行き、どう一日を過ごすか。それを決めるのは利用者さん自身です。担当者は、その決定を実現するために動きます。深く知る関係があるからこそ、「言わなくても分かってくれる」安心が生まれ、利用者さんはより自由に自分の暮らしを選べるようになります。1日1名担当制は、単なる勤務形態ではなく、この理念を現場で支えるための仕組みなのです。
メリットの裏側も正直に:1日1名担当制で知っておきたいこと
良いことばかりをお伝えするのは、誠実ではありません。1日1名担当制には、向き合うべき側面もあります。応募を考える前に、正直に知っておいていただきたいことをお伝えします。
相性や関係づくりにじっくり取り組む必要がある
一対一で深く関わる働き方は、裏を返せば、利用者さんとの関係づくりにしっかり向き合う必要があるということです。人と人の関わりですから、最初から何もかもスムーズにいくとは限りません。お互いを理解し、信頼を育てていくには、ある程度の時間がかかります。ただ、これは「大変なこと」であると同時に、この仕事のいちばんのやりがいでもあります。時間をかけて築いた信頼関係は、ほかでは得がたい手応えをもたらしてくれます。
CILひかりのフォロー体制(コーディネーター・複数担当の仕組み)
「もし相性が合わなかったら」「自分一人で抱え込んでしまわないか」——そんな不安もあるかもしれません。CILひかりでは、担当者が孤立しないよう、コーディネーター(CN)が間に入って調整やサポートを行う体制を整えています。また、一人の利用者さんを複数のスタッフで支える仕組みもあるため、「すべてを一人で背負う」わけではありません。困ったときに相談できる相手がいる——この安心が、長く続けられる職場づくりにつながっています。
未経験から1日1名の現場へ:最初の不安をどう越えるか
「深く関わる介護に興味はあるけれど、未経験の自分にできるだろうか」。そう感じる方も多いはずです。結論からお伝えすると、未経験からこの働き方を始めた方は、CILひかりにも大勢います。
ポイント:入職後すぐに一人で現場に出ることはありません。約2週間の研修と同行研修で、段階的に身につけていけます。
いきなり一人にはならない——約2週間の研修と同行研修
CILひかりでは、入職後すぐに一人で現場に出ることはありません。まず約2週間の新人研修で、座学と実技の両面から学びます。障害のある方の地域での暮らしを知り、当事者の声を直接聞き、車椅子での外出やボディメカニクス(体の使い方で負担を減らす技術)まで、丁寧に身につけていきます。
研修を終えたあとも、先輩のコーディネーターやヘルパーが利用者さん宅へ一緒に伺う「同行研修」があります。重度訪問介護に必要な資格(研修)も、費用は法人が負担する形で取得できます。資格や研修については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
「一人の人とちゃんと関わる」を仕事にできる
最初から完璧にできる人はいません。先輩たちも、みな最初は不安を抱えてスタートしました。けれど、一人の利用者さんとじっくり向き合うなかで、「この仕事を選んでよかった」と感じる瞬間が、少しずつ増えていきます。流れ作業ではなく、一人の人とちゃんと関わる。その願いを、CILひかりの1日1名担当制はかたちにできます。実際に働くスタッフの声は、インタビュー記事でもご覧いただけます。
Q. 担当する利用者さんはずっと固定ですか?途中で変わることはありますか?
A. CILひかりでは一人の利用者さんを複数のスタッフで支える仕組みがあるため、特定の方に深く関わりつつ、状況に応じて担当を調整することもあります。コーディネーター(CN)が間に入って配置を相談しながら決めていくので、いきなり相性の合わない関係を強いられることはありません。
Q. 未経験で資格も持っていませんが、応募できますか?
A. はい、普通自動車免許があれば、無資格・未経験の方も応募いただけます。重度訪問介護に必要な研修は費用を法人が負担する形で受けられ、約2週間の新人研修と同行研修を経て、段階的に現場へ入っていきます。
Q. 1日1名だと、もし利用者さんと合わなかったときが不安です。
A. 関係づくりに時間がかかるのは自然なことです。CILひかりでは担当者が孤立しないよう、コーディネーターへの相談体制や複数担当の仕組みを整えています。一人で抱え込まずに相談できる環境があることが、長く働き続けられる理由のひとつです。