完全同性介助とは?なぜ大切なのか、CILひかりの考え方
「異性の利用者さんの介助に、抵抗を感じてしまう」——介護の仕事に興味はあるのに、その一点で応募をためらう方は少なくありません。CILひかりが取り入れている完全同性介助とは何か、なぜそれを大切にしているのかを、利用者さんの視点と働く側の視点の両方から解説します。
完全同性介助とは?——同じ性別のスタッフが介助する体制のこと
完全同性介助とは、利用者さんと同じ性別のスタッフが介助にあたる体制のことです。
女性の利用者さんには女性のスタッフが、男性の利用者さんには男性のスタッフが対応する。それが完全同性介助です。着替えや入浴、排泄のサポートなど、体に直接ふれる支援を含みます。
介護の求人を見ていると、この言葉を掲げている事業所はそれほど多くありません。だからこそ「完全とは、どこまでを指すのだろう」と気になる方も多いはずです。その範囲についてはこの記事の後半でお伝えします。
その前に知っておいてほしいのは、同性介助が「働く側の希望をかなえるための制度」ではないということ。まず、利用者さんにとっての意味から見ていきます。
まず、利用者さんにとっての意味から
誰に自分の体を委ねるかを選べること。それは、暮らしの尊厳に関わることです。
入浴や着替え、排泄。誰にとっても、もっともプライベートな場面です。見られたくない、できれば同じ性別の人がいい——そう感じるのは、ごく自然な感覚ではないでしょうか。
その感覚は、支援を必要とする状態になったからといって、消えるわけではありません。けれど現実には、介助が必要な場面で「誰に手伝ってもらうか」を自分で選べないことがあります。
たとえば、体調が悪くて動けない日に、着替えを手伝ってもらう場面を想像してみてください。相手が同じ性別かどうかで、感じ方は変わるのではないでしょうか。その「変わる」という感覚そのものが、大切にされるべきものです。
CILひかりは、CIL(自立生活センター=障害のある当事者が運営し、自立生活を支援する団体)の理念で運営されているNPO法人です。大切にしているのは「自己選択・自己決定」——自分の人生を、自分で選び、決めること。
この考え方は、CILひかりだけのものではありません。2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定では、指定基準の解釈通知にこう明記されました。本人の意思に反する異性介助がなされないよう、本人の意向を把握し、その意向を踏まえたサービス提供体制の確保に努めること(厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」より)。同性介助は、働く側の希望をかなえる制度ではありません。利用者さんの意思を尊重するための体制であり、国もその方向を示しています。
その考え方は、どこに住むか、何を食べるかといった暮らし方だけでなく、自分の体に関わることにも及びます。誰に自分の体を委ねるかを選べること。完全同性介助は、その選択を支える体制のひとつです。
働く側にとっての意味——「気にする自分」は、間違っていません
異性介助に抵抗を感じるのは自然なことです。それを我慢する必要はありません。
ここからは、働く側の話です。
「異性の方の入浴や排泄の介助に、抵抗がある」。そう感じたとき、多くの方が同時にこう思います。「こんなことを気にする自分は、介護に向いていないのでは」「プロ意識が足りないのでは」と。
その気持ちを、まず否定しないでください。抵抗を感じるのは自然なことで、あなたに問題があるわけではありません。介護の世界には「慣れれば気にならなくなる」という考え方もあります。それも一つの見方でしょう。ただCILひかりは、別の考え方を選んでいます。
利用者さんが「同じ性別の人がいい」と感じるなら、その感覚は尊重されるべきです。同じように、働く側が抵抗を感じるなら、その感覚も尊重されていい。どちらか一方だけが我慢する関係は、長続きしないからです。
無理を重ねて心をすり減らし、辞めてしまう。それは働く人にとってつらいだけでなく、支援を受ける利用者さんにとっても損失です。安心して働ける人が長く続けられることが、結果として支援の質を守ります。
介護の現場では、人が入れ替わることが利用者さんの負担にもなります。慣れたヘルパーが辞めるたびに、自分の体のことを一から説明し直さなければならないからです。働く人が無理なく続けられる環境は、利用者さんの暮らしの安定にも直結しています。
「自分はこの仕事に向いているだろうか」と考えている方は、向き不向きを整理した記事もあわせてご覧ください。
「完全」とは、どこまでを指すのか
CILひかりでは、体に直接ふれる介助は同性のスタッフが担当します。
気になるのは、「完全」がどこまでを指すのかという点だと思います。入職してから「実は例外がありました」となるのは、お互いにとって望ましくありません。
CILひかりでは、着替え・入浴・排泄といった体に直接ふれる介助を、利用者さんと同じ性別のスタッフが担当します。これは求人の段階から明示している、CILひかりの働き方の特徴のひとつです。
求人票の文言だけでは分からないことは、遠慮なく質問してください。「本当に例外はないのか」「もし人手が足りないときはどうなるのか」。そうした疑問を確かめることは、けっして失礼ではありません。むしろ、長く働くうえで大切な確認です。
具体的な運用については、面接や見学の際に確認していただくのが確実です。「ここまでは同性で対応する」「こういう場面ではこうしている」。曖昧なまま入職するより、納得したうえで始めていただきたいと考えています。
なぜ、明示している事業所が少ないのか
同性介助を徹底するには、スタッフの配置に工夫が必要だからです。
「そんなに大切なことなら、なぜどこもやっていないの?」——そう思われるかもしれません。理由のひとつは、体制づくりの難しさにあります。
同性介助を徹底するには、男女それぞれのスタッフを十分に確保し、利用者さんの性別に合わせて配置する必要があります。1日に何軒も回る働き方では調整が難しく、事業所の規模や人員体制によっては実現しにくい面もあります。
CILひかりでは、1日に担当する利用者さんが1名だけ。この担当制と組み合わせることで、同性介助を続けやすくしています。当事者が運営する法人として、利用者さんの「選べること」を大事にしたい——その理念があるからこその選択です。
そしてこの体制は、男性スタッフ・女性スタッフのどちらも必要としています。「介護は女性の仕事」というイメージを持つ方もいますが、男性の利用者さんを支えるためには男性スタッフが欠かせません。性別を問わず、活躍できる場があります。
不安がひとつ減ったら、次のステップへ
異性介助への不安を理由に、介護の仕事をあきらめる必要はありません。
「人と関わる仕事がしたい」「誰かの暮らしを支える仕事に興味がある」。そう思いながら、異性介助への不安だけで一歩を踏み出せずにいる。もしそんな方がいるとしたら、とてももったいないことだと思います。
介護の仕事は、体に触れる場面だけでできているわけではありません。一緒に買い物へ行くこと、話を聞くこと、その方が「今日はこうしたい」と決めたことを支えること。仕事の大半は、そうした日常の積み重ねです。
働き方や仕事内容をもう少し知りたい方は、1日の流れをまとめた記事からどうぞ。応募に必要なのは普通自動車免許のみ。重度訪問介護従業者養成研修は、入職後に法人の負担で修了できます(2026年7月現在)。
関連記事:重度訪問介護とは?4つの仕事内容と1日スケジュール
実際に働いているスタッフの声も、判断の材料になるかもしれません。異業種から転職した方が、最初の不安をどう乗り越えたのかが語られています。
「応募を決めたわけではないけれど、話を聞いてみたい」——そんな段階のご相談も歓迎しています。気になることは、遠慮なく聞いてください。
Q. 男性スタッフも募集していますか?
A. はい。男性の利用者さんを支えるためには、男性スタッフが欠かせません。性別を問わず募集しており、それぞれに必要とされる場があります。
Q. 同性介助でも、異性の利用者さんと関わる場面はありますか?
A. 体に直接ふれる介助は、同性のスタッフが担当します。ただ事業所の行事やスタッフ同士の連携のなかで、異性の利用者さんと会話をする機会はあります。具体的な運用は面接や見学の際にご確認ください。
Q. 介護未経験ですが、同性介助なら始めやすいでしょうか?
A. 異性介助への不安が理由で迷っていた方にとっては、始めやすい環境だと思います。加えてCILひかりでは約2週間の新人研修と先輩との同行研修があり、いきなりひとりで現場に出ることはありません。