求人に応募しても、年齢で止まる。書類で落ちた理由は書かれていないけれど、たぶんそこだろうと思っている。そういう時期を過ごしている方に、まず数字をひとつお見せします。
介護の現場で、50代は最も人数の多い年齢層です。
この記事の要点
介護労働者のうち50歳代は28.6%で最多。60歳代と合わせると、全体の4割を超えます。
離職率は年齢が上がるほど低くなります。50代以上は、定着する層として数えられています。
体力の不安には、働き方の構造で答えられる部分があります。
1. 介護の現場で、50代は少数派ではありません
介護労働者の年齢構成では、50歳代が28.6%で最も多くなっています。40歳代の28.3%がこれに続き、60歳代も15.9%を占めます。
公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査で、回答した介護労働者の年齢構成は次のようになっていました。
30歳未満……6.2%
30歳代……16.1%
40歳代……28.3%
50歳代……28.6%
60歳代……15.9%
70歳以上……3.4%
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」介護労働者の就業実態と就業意識調査(2026年10月時点で公表されている最新の調査結果)
50歳以上を足すと、47.9%。ほぼ半数です。60歳を超えて働いている人も、2割近くいます。
他の業界で「もう若くない」と言われてきた方にとって、この構成はおそらく想像と違うはずです。介護の職場では、50代は特別な存在ではありません。
背景のひとつは、介護の仕事に中途で入る人が多いことです。同じ調査では、中途採用で介護の仕事に就いた人のうち、直前の仕事が「介護・福祉・医療関係以外の仕事」だった人が、訪問介護員で47.1%、介護職員で48.2%を占めていました。しかもそのうち約85%は、それまで介護の経験がまったくない人たちです。
つまり、別の業界から来て、年齢を重ねてから始めた人が、この現場のかなりの部分を占めているということになります。
採用の入口も、閉じてはいません
同じ調査では、年齢階層別の採用率も集計されています。訪問介護員と介護職員を合わせた2職種で、50〜59歳の採用率は13.3%、60〜64歳は10.4%でした。
全体の採用率が14.3%ですから、50代はそこからほとんど落ちていません。年齢で入口が閉じているという状況ではないことが、数字からも見てとれます。
2. 「人手が足りないから」ではなく、年齢が強みになる理由
50代以上は、離職率が最も低い層です。採用する側から見れば、長く続けてくれる見込みのある人として数えられています。
年齢を理由に採られるという状況を、心から喜べない方もいると思います。仕方なく採用されているのではないか、という感覚です。
ここでも数字を見ておきます。先ほどの調査では、年齢階層別の離職率も出ています。
29歳以下……18.7%
30〜39歳……13.8%
40〜49歳……12.4%
50〜59歳……11.5%
60〜64歳……10.5%
年齢が上がるほど、離職率は下がっています。29歳以下と50代では、7ポイント以上の差があります。
採用する側にとって、これは重要な情報です。採用して育てた人が1年で辞めてしまうことが、事業所にとっては最も大きな損失だからです。長く働いてくれる見込みがあるという点で、50代以上は不利な条件ではありません。
経験そのものが、仕事の中で働く場面もあります
重度訪問介護は、利用者の生活にそのまま入っていく仕事です。長い時間をそばで過ごすので、会話の時間も多くなります。
ここで、別の仕事や暮らしで積んだ時間が働く場面があります。人の話を急がずに聞けること、相手の調子に合わせて間を取れること。こうしたことは研修で教わるものではありませんが、仕事の質にそのまま関わります。
ただし、年齢を重ねていれば自動的にそうなる、という話ではありません。年齢が不利にならない仕事だ、という程度に受け取っていただくのが正確です。
3. 体力は、本当に壁になるのか
体力の不安は、働き方の構造によって意味が変わります。同じ介護でも、1日のうちに体にかかる負荷の形が違います。
50代から介護を考えるとき、いちばん大きな不安はおそらく体力です。これは正面から扱います。
まず、楽な仕事ではありません。人の体を支える場面はありますし、長時間の勤務もあります。そこをごまかすつもりはありません。
そのうえで、介護の中でも働き方によって負荷のかかり方が違う、という話をします。
1日に担当するのは1名です
CILひかりでは、1日に担当する利用者は1名です。複数の家を回ることも、施設で何人もの方を順に介助することもありません。
これが体への負荷に効いてきます。短時間に何人もの介助を続ける働き方では、体勢を整える間もなく次の動作に移ることになります。1日1名であれば、その方の体の状態と部屋の環境に合わせた介助の形が決まっていきます。同じ相手、同じ場所で繰り返すぶん、無理な姿勢が減ります。
見守りの時間があります
重度訪問介護には、常に手を動かしているわけではない時間があります。利用者が読書をしている、テレビを見ている、眠っている。その間、介助者は同じ空間にいて、必要になったときに動けるようにしています。
この時間も勤務時間として給与の対象です。8時間ずっと動き続ける仕事ではない、という点は、体力に不安のある方には意味のある違いだと思います。
ただし、楽な時間という意味ではありません。何かあればすぐ動く必要があり、そのための注意は続いています。
4. 「今から覚えられるか」という不安について
未経験から始める方のための研修があります。覚える速さではなく、分かるまで聞けるかどうかのほうが大事です。
新しいことを覚えるのに時間がかかるようになった。その自覚がある方は多いと思います。
CILひかりでは、未経験の方が入職してから担当を持つまでに、二段階の研修があります。
ひとつは重度訪問介護従業者養成研修です。これは未経験から重度訪問介護に従事するための入口のひとつで、CILひかりでは法人が費用を負担する形で修了できます。研修を受けている期間中も、給与は通常どおり支給されます(2026年10月現在)。
もうひとつが、入職後の約2週間の新人研修です。座学と実技を組み合わせた内容になっています。障害のある方の地域生活について学ぶ時間や、ボディメカニクス(体の使い方による腰痛対策)の実習などが含まれます。その後、先輩スタッフに同行する研修を経てから、担当を持ちます。
急かされる場面がない、という構造
慣れるペースには個人差があります。決まった期日までに一人にならなければいけない、という運用はしていません。
そして、1日1名担当であることが、ここでも効いてきます。覚える相手が一人ずつだからです。何人分もの手順を同時に頭に入れる必要がなく、一人の方の生活の流れを覚えることから始められます。
独り立ちしたあとも、判断に迷う場面ではコーディネーター(現場とスタッフをつなぐ調整役)に相談できます。
5. 年下の先輩に教わることについて
これは、50代で未経験の仕事に移る方の多くがぶつかるところです。先に言葉にしておきます。
介護の職場では、20代や30代のスタッフが先輩であることは普通にあります。入職すれば、その人たちから教わることになります。
長く働いてきた方ほど、ここに引っかかりを感じることがあります。これまで教える側にいた人なら、なおさらです。
ただ、実際に現場で起きていることは、少し違う形をしています。教えているのは介護の技術そのものよりも、「この利用者さんは、こういう順番で一日を過ごす方です」という個別の情報です。その方と長く関わってきた人が、まだ関わっていない人に伝える。年齢ではなく、その人をどれだけ知っているかで決まる関係です。
半年もすれば、あなたも誰かにとっての「その人をいちばん知っている人」になります。
逆に、年上であることが面倒を生む場面もあります
正直に書いておきます。年上の新人に対して、気を遣って言いにくくなる先輩もいます。間違いを指摘されないまま進んでしまうと、困るのは利用者です。
ここは、ご自身から「分からないので教えてください」と言えるかどうかにかかってきます。年齢が壁になるとすれば、体力よりもむしろこちらだと思います。
6. 始める前に、確かめておきたいこと
年齢に関係なく、職場によって働き方は大きく違います。見学や面接で確認できることを挙げます。
① 1日に何人の方を担当しますか
体への負荷を左右する、いちばん具体的な質問です。移動の回数と、1日に関わる人数を聞いてみてください。数が多いほど、体勢を整える余裕は減ります。
② 同世代のスタッフは、どのくらいいますか
統計上は50代が最多でも、職場ごとの構成は違います。同じ年代の人がいるかどうかは、働き始めてからの居心地に直結します。
③ 覚えるまでの期間は、どう考えられていますか
「何日で独り立ち」と決まっている職場と、個人差を前提にしている職場があります。急かされると、かえって身につきません。
CILひかりに対しても、この3つはそのまま聞いていただいて構いません。
※本記事の統計・制度に関する記述は、2026年10月時点で公表されている情報にもとづいています。
Q. 60代でも応募できますか
A. 年齢による応募制限は設けていません。応募に必要なのは普通自動車免許のみです。介護労働者全体でも60歳代は15.9%を占めており、珍しいことではありません。
Q. 介護の経験がまったくありませんが、不利になりませんか
A. 未経験からの入職が多数派です。重度訪問介護従業者養成研修は法人が費用を負担する形で修了でき、その後に約2週間の新人研修と同行研修があります。
Q. 体力に自信がありません。続けられるでしょうか
A. 1日1名の担当制で、複数の家を掛け持ちすることはありません。見守りの時間も勤務時間に含まれます。ただし楽な仕事ではありませんので、見学で実際の1日の流れを確認されることをおすすめします。