重度訪問介護の利用者さんってどんな方?ALS・脳性麻痺など代表的な障害と、地域で輝く当事者のリアル
重度訪問介護の利用者さんは、病院や施設だけで暮らしているわけではありません。地域で暮らし、働き、結婚や子育て、趣味や旅行も楽しみながら、自分らしい人生を生きている当事者のリアルをお伝えします。
重度訪問介護の利用者さんとは?対象となる障害の種類
重度訪問介護は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつです。支援区分4以上、主に区分6の重度の肢体不自由、知的障害、精神障害がある方が対象となります。介護保険の訪問介護とは異なり、利用者さんのご自宅に長時間滞在しながら、生活全般を支えることが大きな特徴です。
そのため、この仕事で出会う利用者さんは「介助を受ける人」というだけではありません。自宅で暮らしながら、仕事をしたり、家族と過ごしたり、地域とのつながりを持ちながら毎日を送っている生活者です。
代表的な疾患と障害
実際に重度訪問介護を利用される方の障害は多岐にわたります。代表的な例として、次のような疾患や障害があります。
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)……筋力が徐々に低下していく遺伝性の難病
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)……運動神経が障害され、全身の筋力が失われていく疾患
- 脳性麻痺……出生前後の脳損傷による運動機能障害
- 脊髄損傷……事故や疾患による脊髄の損傷で、手足の麻痺が生じる状態
- 筋ジストロフィー……遺伝性の筋肉疾患で、全身の筋力が進行性に低下する病気
利用者さんは一人ひとり違う
同じ障害名でも、必要な支援や生活のスタイル、性格、趣味、叶えたいことは人それぞれです。診断名だけで捉えるのではなく、その人自身の暮らしに目を向けることが重度訪問介護では大切です。
SMA(脊髄性筋萎縮症)ってどんな病気?
SMAは、脊髄の運動ニューロンが変性することで、全身の筋力が徐々に低下していく遺伝性の難病です。発症頻度は約10万人に1人とされており、症状の進行とともに車いすの使用や人工呼吸器が必要になる場合があります。
CILひかりの代表・川﨑良太さんもSMAの当事者です。幼少期はつかまり立ちができていたものの、成長とともに手動車いす、電動車いすへと移行し、現在は夜間のみ人工呼吸器を着用しながら生活されています。それでもNPO法人の代表として活動し、2019年に結婚し、お子さんもいらっしゃいます。
「施設や病院にいる人」というイメージは本当か?地域で暮らす当事者のリアル
重度障害者と聞くと、「病院や施設で生活している人」というイメージを持つ方は少なくありません。しかしそれは、地域で暮らす当事者の姿に触れる機会が少ないからです。実際には、鹿児島市内のご自宅で生活しながら、仕事をし、結婚し、子育てをし、映画や旅行も楽しんでいる方がいます。
その背景にあるのが、自立生活センター(CIL:Center for Independent Living)の考え方です。1972年にアメリカで生まれ、日本では1987年に東京・八王子に初めて設立されました。CILひかりもその流れを汲むNPO法人として、鹿児島市を拠点に活動しています。
CILの考える「自立」とは
CILが大切にしているのは、「自己選択・自己決定・自己責任」という考え方です。自分の身の回りのことをすべて一人でできることが自立ではありません。必要な支援を受けながらも、自分の人生を自分で選び、決め、その選択に責任を持つことが自立だと考えています。
川﨑代表がよく語るように、私たちはもともと多くの人に支えられて生きています。食べ物ひとつを手にするにも、生産する人、運ぶ人、売る人がいて初めて成り立ちます。重度障害者が介助者の力を借りることも、その延長線上にある自然な営みです。
鹿児島で自立生活を送る当事者の声
2026年に開催された「自立生活講演会」では、CILひかりの利用者である上妻龍一さんと岩坪望さんが、自立生活への道のりと今の暮らしについて語ってくださいました。
上妻龍一さんの言葉
「2018年11月28日に退院しました。24時間ヘルパーさんに入ってもらって自立生活へ。好きなときに好きなことができる生活を楽しんでいます」
上妻さんはSMAの当事者で、種子島出身。長年病院で生活していましたが、川﨑代表との出会いをきっかけに自立生活を決意しました。主治医から強い反対を受けながらも退院を果たし、現在は動物園や川遊び、綿あめを楽しむ日常を送っています。
岩坪望さんの言葉
「CILや自立生活について学んで、34歳で自立生活をスタートしました。時間に縛られずヘルパーと映画や買い物に行けることが楽しいです」
「少しずつ自分から伝えられるようになってきて、今では自分らしい生活を送っています」
岩坪さんは脳性麻痺の当事者で、特別支援学校卒業後は施設で生活していましたが、「このままここにいるのかなぁ」という違和感から自立を決意しました。ご家族の反対を乗り越え、今では趣味や学びを広げながら自分らしい毎日を送っています。
ポイント:重度訪問介護の利用者さんは、「特別な場所にいる人」ではなく、地域で暮らしながら自分の人生をつくっている当事者です。
利用者さんはどんな気持ちでヘルパーと関わっているか
重度訪問介護の利用者さんは、ヘルパーに何を求めているのでしょうか。これは、仕事に関わる前に知っておきたい大切な視点です。
求めているのは「技術」より「人としての関係」
重度の障害がある方は、生活のほぼすべてをヘルパーとともに過ごします。1日8時間、10時間、場合によっては24時間という長い時間を共有するからこそ、「作業をこなす関係」ではなく、「一緒に生活をつくる関係」として捉えることがとても重要です。
自立生活センターの考え方には、「障害者は、治療を受けるべき患者でも、守るべき子どもでも、崇拝されるべき神でもない。援助を管理すべき立場にある」という言葉があります。つまり、ヘルパーは「してあげる」人ではなく、利用者さんの意思を実現するために動く存在なのです。
管理されることへの抵抗感と、信頼関係の大切さ
岩坪さんが自立生活で最初に大変だったこととして語っていたのが、「自分から指示を出すことが難しかった」という経験です。施設では時間やルールに縛られる生活だったため、自己決定そのものに慣れていない状態でのスタートでした。
その中で大きな役割を果たしたのが、CILひかりのコーディネーターやヘルパーとの日々のやりとりです。「少しずつ自分から伝えられるようになってきた」という変化は、短期間ではなく、長く関わる中で育まれた信頼関係から生まれています。
1日1名担当制だからこそ生まれる関係性
CILひかりでは「1日1名担当制」を採用しています。複数の利用者さんを掛け持ちするのではなく、1日に担当するのは1名のみです。これにより、利用者さんの生活リズムや好み、伝え方の特徴まで深く理解しやすくなります。
上妻さんのように気管切開をして声が出にくい方でも、表情や視線、小さなサインを読み取ることが支援の核心になります。それは知識だけで身につくものではなく、慣れと信頼の積み重ねの中で育っていく力です。
未経験者が感じる不安——利用者さんとのコミュニケーションはどうする?
重度訪問介護に興味を持ちながらも、「コミュニケーションが取れるか不安」という声はよく聞かれます。話せない方、声が出にくい方、表情が分かりにくい方とどう向き合えばいいのか。これは多くの未経験者が最初に感じる壁です。
コミュニケーションが難しいと感じる理由
多くの場合、「コミュニケーション=話すこと」というイメージが先にあります。しかし重度訪問介護では、言葉以外のやりとりが中心になることも少なくありません。目の動き、表情のわずかな変化、身体のこわばりなど、非言語のサインを読み取ることが大切になります。
最初から完璧にできる人はいません。CILひかりでは、入社後1ヶ月は先輩スタッフとの同行研修があり、「わからなければ一緒に確認する」という体制が整っています。未経験でも安心して現場を学べる環境があります。
「話す」より「そばにいる」ことの価値
上妻さんは、「重度訪問介護を利用して、好きなときに好きなことができる生活を楽しんでいます」と話されています。ヘルパーが一緒にいることで、動物園に行けた、川で遊べた、綿あめを食べられた。そのひとつひとつが、利用者さんの生活の質をつくっています。
会話が少なくても、「そこにいてくれること」が利用者さんにとって大きな意味を持つことがあります。見守りの時間にテレビを一緒に見たり、読書の邪魔をしないように静かにそばにいたりする。その積み重ねが信頼関係の土台になります。
CILひかりが未経験者を安心させる仕組み
CILひかりのスタッフの約8割が介護未経験からのスタートです。入社後は重度訪問介護従業者養成研修を受講し、その後に現場へ入ります。研修中も給与が支払われ、同行期間中は先輩スタッフが一緒に入るため、「一人で判断しなければならない」という状況はありません。
不安を抱えたまま独り立ちさせるのではなく、段階を踏みながら仕事を覚えていけることが、未経験者にとって大きな安心につながっています。
未経験でも始めやすい理由
大切なのは、最初から完璧にできることではなく、利用者さんを知ろうとする姿勢です。研修と同行の中で、必要な知識や関わり方は少しずつ身についていきます。
重度訪問介護が「人生に関わる仕事」である理由
重度訪問介護の仕事は、身体介助や見守りだけではありません。利用者さんが「どう生きたいか」を実現するために、そばで支える仕事です。
利用者さんの「やりたい」を叶える仕事
川﨑代表は「利用者さんのやりたいを叶える毎日」という言葉を使います。「好きなときにサッカーの試合を観たい」「久しぶりに鹿児島港から桜島を眺めたい」といった日常の願いに応えることが、重度訪問介護の本質です。
岩坪さんが自立後に実現したことのひとつが、東京への旅行でした。長年施設で生活し、時間も行動も管理されてきた方が、自分でスケジュールを組み、電車に乗り、東京タワーを見上げた。その瞬間に関わったヘルパーは、単なる介助者ではなく、一緒に人生を歩む存在だと言えます。
当事者が語るヘルパーへの想い
上妻さんは講演の最後に「頼れる当事者スタッフになりたい」と語りました。自分が利用者として支えてもらった経験を活かし、次は仲間を支える側に回りたいという思いです。
こうした言葉が生まれるのは、利用者とヘルパーの関係が一方的ではなく、互いに影響し合うものだからです。支える側もまた、利用者さんの生き方や価値観から多くを学びます。
この仕事を選んだ理由を、スタッフは何と言っているか
CILひかりのスタッフインタビューには、「介護経験ゼロからコーディネーターへ」「建築から介護へ転職」「決められた介護じゃない、利用者さんのやりたいを叶える毎日」といった言葉が並びます。共通しているのは、「この仕事でなければ味わえない手応え」があることです。
施設介護では「次の利用者さんへ急ぐ」働き方になりやすい一方、重度訪問介護では1日1名とじっくり向き合います。利用者さんの変化に気づけること、ありがとうが届くこと、その実感がこの仕事の魅力になっています。
ポイント:重度訪問介護は、生活動作を支えるだけでなく、その人の「こう生きたい」を現実にしていく仕事です。
まとめ:利用者さんは「支援を受ける人」ではなく「自分の人生を生きる人」
重度訪問介護の利用者さんは、SMA・ALS・脳性麻痺などの障害を持ちながら、鹿児島市内のご自宅で自分らしい生活を送っている方たちです。施設や病院だけで暮らす存在ではなく、結婚し、旅行し、資格を取り、自立支援に関わりたいと動いている、そんなリアルな姿があります。
「自己選択・自己決定・自己責任」という理念のもと、利用者さんは自分の人生の主役です。ヘルパーはその隣に立ち、「やりたい」を実現するために動く存在です。技術よりも先に、この関係性の本質を理解することが、重度訪問介護の仕事を始める最初の一歩になります。
CILひかりでは随時、見学・相談を受け付けています。「まずは話を聞いてみたい」という方は、ぜひエントリーページからお気軽にご連絡ください。
Q. 重度訪問介護の利用者さんは、どんな方が多いですか?
A. SMA、ALS、脳性麻痺、脊髄損傷、筋ジストロフィーなど、重い障害や難病のある方が利用されています。ただし、同じ診断名でも必要な支援や暮らし方は一人ひとり異なります。
Q. 未経験でも利用者さんと関われますか?
A. はい。CILひかりでは養成研修と同行研修があり、先輩スタッフと一緒に学びながら現場に入れます。未経験から始めたスタッフも多く、安心してスタートできる環境があります。
Q. 重度訪問介護と施設介護の違いは何ですか?
A. 重度訪問介護は、利用者さんの自宅で長時間寄り添いながら、その人らしい生活を支える仕事です。1日1名担当制のため、生活全体に深く関われる点が大きな特徴です。


